競馬を見ていると、パドックなどで馬の口元から舌が少し見えていることがあります。
さらに競馬の記事を読んでいると、
「今回は舌を縛って出走する」
「舌縛りを施した」
といった表現を目にすることもあります。
初めて聞くと少し驚く言葉ですが、競馬の世界では「舌縛り(したしばり)」と呼ばれる馬への対策があります。
なぜ競走馬の舌を縛る必要があるのでしょうか。
競馬の「舌縛り」とは?
舌縛りとは、その名前の通り、馬の舌が大きく動かないようにする方法です。
JRAの競馬用語辞典でも「舌縛り」という用語が掲載されています。
主に、ハミを越して舌を出してしまう癖のある馬などに使用されます。
実際に行う際には、舌を傷つけないように幅のある包帯や専用の装具などが使われます。
「縛る」という言葉から細い紐で強く縛るような姿を想像してしまいますが、そのイメージとは少し違います。
そもそも「ハミ」とは?
舌縛りを理解するには、まず「ハミ」について知っておく必要があります。
ハミとは、馬の口に装着する棒状の金具です。
騎手が操作する手綱はハミにつながっていて、騎手から馬へ合図を伝える重要な役割を持っています。
つまり、
騎手
↓
手綱
↓
ハミ
↓
馬
という形で意思を伝えるわけです。
競走馬にとっては非常に重要な道具です。
「舌を越す」とは?
ところが、馬の中には舌を動かしてハミの上側へ持っていってしまう馬がいます。
競馬ではこれを「舌を越す」と表現します。
人間からすると「なぜそんなことを?」と思ってしまいますが、馬によってはハミへの違和感などから舌を動かし、それが癖になってしまうことがあります。
JRAには「ハミ吊り」という馬具もあり、こちらもハミを越して舌を出す癖を防ぎ、ハミの位置を正しく保つ目的で使用されています。
それでも舌を越してしまう馬などに、舌縛りが使われることがあります。
なぜ舌を出すと困るの?
大きな理由のひとつが、ハミによる指示を正しく伝えにくくなることです。
ハミは騎手と馬をつなぐ重要な部分です。
その位置関係が崩れてしまえば、当然ながら騎手にとって馬をコントロールしにくくなる可能性があります。
時速60km前後にも達する競馬では、ほんの少しの操作のズレも無視できません。
そのため、単純に「見た目が悪いから舌を出させない」という話ではありません。
舌縛りをすると速くなる?
ここは少し注意したいところです。
「舌縛り=競走能力アップ」と考えるのは単純すぎます。
舌を越す癖などによって本来の走りができていなかった馬なら、対策することでプラスに働く可能性はあります。
しかし、舌を縛ったから突然能力そのものが上がるわけではありません。
海外の競走馬関係者を対象とした研究でも、舌縛りは気道の問題を減らすことや舌がハミを越えることを防ぐ目的などで使われています。一方で、競走能力そのものを向上させる効果については、それらの目的ほど明確に評価されていません。
馬券を買う側としても、
「舌縛りをしたから買い」
と単純に判断するより、
「これまで何か問題があって、その対策をしてきた可能性がある」
くらいに考えるのがよさそうです。
舌を出して走っている馬は大丈夫?
レース中、舌を出しながら走っている馬を見かけることもあります。
だからといって、舌を出している馬が必ず能力を発揮できていないとは限りません。
舌を出す理由や程度は馬によって異なるためです。
実際、舌を出す姿が印象的な競走馬もいます。
人間にもそれぞれ癖があるように、競走馬にもいろいろな癖があります。
パドックやレース映像を長く見ていると、
「この馬、いつも舌を出しているな」
と気付くこともあるでしょう。
こうした細かい個性を見つけるのも、競馬の面白いところです。
舌縛り以外にもさまざまな馬具がある
競走馬には、舌縛り以外にもさまざまな工夫がされています。
例えば、
・ブリンカー
・シャドーロール
・チークピーシーズ
・ハミ吊り
・バンデージ
など。
一見すると単なる飾りに見えるものでも、それぞれきちんとした目的があります。
馬は一頭一頭性格も癖も違います。
周囲を気にする馬もいれば、集中力を欠きやすい馬、頭を上げてしまう馬、舌を越してしまう馬もいます。
それぞれの馬に合わせて道具を工夫するのも、競馬を支える厩舎スタッフの仕事というわけです。
まとめ
競馬で行われる「舌縛り」は、主にハミを越して舌を出してしまう癖などへの対策として使われます。
初めて言葉だけを聞くと少々びっくりしますが、JRAの競馬用語辞典にも掲載されている競馬用語のひとつです。
普段はどうしても馬の脚や馬体ばかり見てしまいますが、次にパドックを見るときは口元にも注目してみてください。
「あれ、この馬は舌を出している?」
そんなところから競走馬それぞれの癖を探してみると、馬券とはまた違った競馬の楽しみ方ができるかもしれません。


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